東京マルイのガスガンS&W M&P9は、
アメリカの銃器メーカースミス&ウェッソン社が開発したポリマーフレームオートをモデルに ガスブローバック化し2014年8月1日から販売を開始したエアガンです。
東京マルイはスミス&ウェッソンM&P9のガスガン化に当たって、日本のガンマニアにもなじみ深い9㎜パラベラムモデルを選び、一部の機能を除いてできる限り実銃に忠実に再現することを目指しました。
今回はこの東京マルイのガスガンS&W M&P9をご紹介します。
実銃のS&W M&Pについて

スミス&ウェッソン社のM&Pと名付けられたハンドガンは2つあります。
1つは1980年代中頃までアメリカの制服警官に使われたM10と名付けられたリボルバーのことです。
スミス&ウェッソン社でKフレームと名付けられたソリッドフレームのスイングアウトリボルバーで、
口径.38スペシャルのカートリッジを撃つこの銃は、アメリカの新人警官のリボルバーについての講義でカッタウェイ図が使われるほど、スミス&ウェッソン社の代表的なリボルバーだったのです。

スミス & ウェッソン M&Pの40口径モデル 画像引用:ウィキペディア(Wikipedia)
そして、2つ目が今回ご紹介する東京マルイのM&P9のモデルになったポリマーフレームオートピストルです。
ちなみにM&Pとは(ミリタリー&ポリス)を表したもので、スミス&ウェッソン社が警察・司法機関での採用を目指したネーミングです。
S&Wポリマーオートのこれまでの評価

1982年に突如ミリタリーピストルの世界に彗星のように姿を現したグロック17は、その後のミリタリー&ポリスピストルの流れを大きく変えました。
グロック17はフレームの材質にポリマーを導入し、旧式化していたストライカーにファイアリングピンブロックを組み込むことで、
シンプルな操作と素人でも扱える安全性を実現し、世界中の軍・警察関係に採用され出したのです。
このグロック17の登場はヨーロッパの銃器メーカーに対して、熱烈なポリマーオート開発競争を巻き起こします。
そしてアメリカのスミス&ウェッソン社もこの流れに乗り遅れまいと、ポリマーフレームオートの開発に乗り出します。

そうして誕生したのが、スミス&ウェッソン「シグマ」です。
しかし、このシグマはあまりにもグロックに似すぎていました。
バレルなどはグロックのバレルがそのまま使えるほどだったのです。
当然、グロックに似すぎたシグマはグロックから訴訟を起こされ、グロックのデッドコピーという印象を持たれます。
そこでこのシグマのイメージを払拭すべく次に企画されたのがスミス&ウェッソン99です。

このSW99はフレームがドイツのワルサー社製、スライドがスミス&ウェッソン社製という成り立ちでした。
しかし、アメリカのユーザーからはこのSW99に対して「他人のフンドシで相撲をとった」製品として、スミス&ウェッソン社のオリジナルのハンドガンとは認められなかったのです。
そのためセールス的にも良い結果を得られなかったのです。
そして、これまでの評価を覆すべくツ開発されたのがM&P9だったのです。
S&W社が新作ポリマーオートにM&Pの名前を付けた意気込み

アメリカでは1980年代中頃から犯罪者たちの持つハンドガンが多弾数化し始め、それまで制服警官に支給されていた6連発のリボルバーでは太刀打ちできなくなっていました。
そこで警察・司法機関で多弾数のセミオートピストルが採用されはじめたのですが、それらはいずれもグロック、SIG、H&Kといったヨーロッパ製のハンドガンだったのです。
しかし、スミス&ウェッソン社には、警察・司法機関がセミオートピストルに乗り換えるまでの約半世紀に渡って、自社のリボルバーで警察官と共に治安を守ってきたというプライドがあったのです。
この市民の命を守る警察のハンドガンの座を、ヨーロッパ勢から取り戻す!
そういった願いを込めて、スミス&ウェッソン社では新たに開発したポリマーオートピストルにM&P(ミリタリー&ポリス)のネーミングを与えたのです。
東京マルイのガスガンS&W M&P9の外観の特徴

東京マルイのM&P9の外観の中で大きく目を引くのは、フレームのダストカバー部に付けられたピカティニー規格対応のアンダーマウントレールです。
シュアファイアーなどのウェポンライトが無加工が取り付けられます。
刻印はチャンバーブロックに「9MM」の文字があることから、このM&P9が9㎜パラベラムモデルだと分ります。

スライド右側面にはS&Wの刻印が、左側面にはM&Pの刻印が彫られています。
チャンバーブロック上にはローディングインジケーター代わりの穴が作られており、受けから見るとJ金色のカートリッジが確認できますが、もちろんこれはダミーです。
ついでに言うとエジェクションポート横のエキストラクターもモールドによるダミーパーツです。
東京マルイのガスガンS&W M&P9の機能
東京マルイのガスガンS&W M&P9には、2つのセフティー、パームスウェル、セフティーレバーとスライドキャッチレバーのアンビ化などの機能があります。
東京マルイのガスガンS&W M&P9のセフティー機能

東京マルイのガスガンM&P9にはトリガーセフティーとサムセフティーが付いています。
トリガーセフティーはグロックと同じコンセプトですが、グロックよりもハイグリップ向きのデザインになっています。
実銃のスミス&ウェッソンM&Pのサムセフティーはオプション設定になっていておりオリジナルデザインでは付いていませんが、
東京マルイのM&Pには最初からサムセフティーレバーが付いています。

ちなみにこのセフティーレバーは左右の両面から操作可能なアンビタイプです。
実銃のスミス&ウェッソンM&P9にはトリガーを引かない限り常にストライカーの前進をロックするインターナルセフティーが内蔵されているので、
サムセフティーがオプション扱いなのでも安全なのですが、
東京マルイのM&P9の撃発方式はハンマー式にアレンジされていいるため、安全対策としてサムセフティー機能を付けているのでしょう。
実銃のスミス&ウェッソンM&P9にサムセフティーレバーが付いていない理由

実銃のスミス&ウェッソンM&P9にサムセフティーが付いていない理由は、余分な動作を極限まで取り除いてシンプルな操作での発射を目指したためです。
チャンバーにカートリッジを装填した後は、トリガーセフティーとストライカーの前進をロックするインターナルセフティーで安全に携帯する。
そして撃つ時にはトリガーを引くだけという単純な操作で発射する。

このマニュアルセフティーを廃止してインターナルセフティーだけに任せる思想を最初に取り入れたのはSIG/SAUER P220であり、
それにストライカー方式とトリガーセフティーとを組み合わせて成功したのがグロック17なのです。
そして同様のシステムがスミス&ウェッソンM&P9にも組み込まれています。

警察や軍隊の一般兵士の誰もが特殊部隊員のようにハンドガンの扱いに慣れているわけではありません。
そういった人達が安全に銃を取り扱うための機能が、トリガーセフティーとインターナルセフティーなのです。
そしてそのセフティーメカニズムはS&W M&P9に組み込まれています。

そのため、スミス&ウェッソンM&P9は癖のあるトリガーフィーリングになっています。
ハンドガンに不慣れな人が暴発を起こさないように、トリガーの引き始めは重くなっています。
「重い、重い、重い、(いきなり)ドン!、スカッ!(撃った後のトリガーの遊び)」
東京マルイのM&Pのトリガーフィーリングもこの実銃の癖を引き継いでいます。
東京マルイのガスガンS&W M&P9のモジュラーグリップ機能

スミス&ウェッソンM&P9には使う人の手の大きさに合わせてグリップの握り具合いを変えられるモジュラーグリップシステム機能があります。
これをスミス&ウェッソンでは「パームスウェル」と名付けています。
従来のMHS(モジュラーグリップシステム)とスミス&ウェッソンのパームスウェルの違いは、
これまでのMHSではグリップの前後の長さは変えられても、横幅はそのままでした。

それに対してパームスウェルの優れた所は、グリップ後ろのストラップだけでなくグリップパネル全体を交換するので、握り幅まで変更できるのです。
このパームスウェルの交換機能によってスミス&ウェッソンM&P9では、手の小さな人のグリップフィーリングがグロックよりも優れていると評価されています。
ちなみにパームスウェルはS、M、L、の3つが付いていて、使う人の手の大きさに合わせてグリップの握り具合いを変えられます。
東京マルイのM&Pも、この実銃のM&P9のパームスウェル機能を再現しています。
東京マルイのガスガンS&W M&P9のスライドキャッチレバーの機能

東京マルイのM&P9のスライドキャッチレバーは左右の両サイドから操作できるアンビタイプになっており、実銃のスミス&ウェッソンM&Pの機能をそのまま再現しています。
また、スライドキャッチレバーはスライド内側の金属スライドレールと噛みあうので、スライドキャッチレバーが入る切込みが削れる心配もありません。

そして東京マルイのM&P9は、
実銃のスミス&ウェッソンM&P9と同じようにサムセフティーレバー、スライドキャッチレバー、マガジンボタンの全てがグリップした手の親指で届く範囲に配置されています。
初弾をチャンバーに送り込んだ後の操作は、全て片手で行えるのです。
ただ、惜しむらくはマガジンキャッチボタンがアンビタイプでないことです。
もしマガジンキャッチボタンまでもアンビになっていたならFN FNXと同じレベルの左利きに優しいハンドガンになっていたでしょう。
東京マルイのガスガンS&W M&P9のフィールドストリップと可変ホップアップ調整ダイヤル

東京マルイのM&9Pのフィールドストリップ(通常分解)は、トリガー上部のテイクダウンレバーを下げるだけでスライドが前方に引き抜けフレームと分離できます。
これまでの東京マルイのガスブローバックハンドガンは、この状態でアウターバレル下のホップ調整ダイアルを回してホップの掛り具合を調整していましたが、
M&Pではスライドをホールドオープンした状態でチャンバー横のホップ調整ダイアルを回して調整できます。

フィールドストリップのやり方は、形状の違いこそあれ1980年以降のモダンセミオートピストルの殆どが、このテイクダウンレバー方式を採用しています。
ただ、どれもこれも同じような通常分解になってくると、
大昔の南部14年式やルガーP08、モーゼルC96などの個性的な通常分解を懐かしく思うのは老害の独りよがりでしょうかね(;^_^A アセアセ・・・
東京マルイのガスガンS&W M&P9のマガジンと装弾数

東京マルイのM&P9のマガジンは亜鉛ダイキャスト製で6mmBB弾を25発装填できます。
ただキャパ一杯にギチギチと詰めるとBB弾の上りが渋くなり初弾装填時に装填不良を起こすケースがあるので、フルチャージから1発引いた24発装填がおすすめです。
スペアーマガジンも1本¥2,980(税別)で販売されているので、予算に余裕があればスペアーマガジンを3本ほどは揃えてみたいですね。
東京マルイのガスガンS&W M&P9の実射レビュー

東京マルイのM&P9の平均初速は69m/s前後です。
弾道自体もこれまでの東京マルイのガスブローバックガンと同様にフラットで素直な弾道で言うことはありません。
サバゲー用でもブリンキング用としても楽しめるガスブローバックガンです。
東京マルイのガスガンS&W M&P9のまとめ

スミス&ウェッソンM&P9はアメリカの銃器開発者が「自国の治安を守るのは国産銃だ!」という矜持をかけてデザインした銃です。
それまでヨーロピアンピストルに市場を席巻されていたアメリカのガンナッツたちは、
自国産のポリマオートピストルを開発できるのはスミス&ウェッソン社ではないかと期待していたのです。
そのユーザーの期待に応えたスミス&ウェッソン社のM&P9は、スミス&ウェッソン社にとっても久しぶりにセールス的成功を納めたハンドガンとなりました。
このスミス&ウェッソンM&Pは.40S&Wというカートリッジを撃つM&P40がベーシックモデルでした。
しかし東京マルイは一般人でも認知の高い9㎜パラベラムモデルのM&P9をガスガンに選びました。
さらに東京マルイではこのM&P9をベースにM&P9Vカスタム、M&P 9L PCポーテッドというバリエーション展開をしていきます。
これらのM&P9についてもいずれ機会があればご紹介します。