Contents
自動小銃とはどんな銃なのか?
自動小銃とはどんな銃なのか?簡単に答えると装填、発射、排莢、再装填の1サイクルを、人の手を介さずに行ってくれる小銃のことです。
こうやって書けばいかにも簡単なことに感じますが、中国で発明された黒色火薬が銃に応用されるようになってから、人類が自動小銃を手にするまで実に700年以上の時間が必要でした。
その理由は、自動小銃に必要な素材が登場するのに、化学と産業革命による金属の加工生産技術の発達が不可欠だからです。
これらの条件が揃ってもボルトアクションライフルが精一杯で、小銃の自動化には更に時間が必要でした。
自動小銃の特徴とは?
FG42
ラインメタル社が開発したナチス・ドイツの汎用自動小銃。クレタ島の戦いで得た戦訓を踏まえ、1942年に降下猟兵による運用を想定し開発された。モーゼル弾を使用し、セミ/フル切り替え可能な為、分隊支援火器としても使用できた pic.twitter.com/x5tTTb5K2D— 銃 紹介BOT (@Gunsbot) September 16, 2019
自動小銃は英語で「AUTOMATIC RIFLE」と表記され、全自動で連射できる小火器のことになります。
こう書くと「じゃあ、サブマシンガンも自動小銃?アサルトライフルも自動小銃なの?」という疑問を持たれると思います。
実は自動小銃と他の全自動で連射できるサブマシンガンやアサルトライフルには、わずかながら違いがあるのです。
リー・エンフィールド
60余年間にわたりイギリス陸軍の制式小銃であった脱着可能な10発入りダブルカラムマガジンを備えたボルトアクションライフル。大英帝国およびイギリス連邦をはじめとする諸国の軍隊や警察において広く用いられたpic.twitter.com/XaiaiSKc— 銃 紹介BOT (@Gunsbot) September 9, 2019
「自動小銃」と呼ぶからには当然として「自動でない手動の小銃」があるわけで、それが前回にご紹介したボルトアクションライフルなのです。
自動小銃の定義はこのボルトアクションライフルに使うフルスペックのカートリッジをセミオートで発射できる銃のことを指すのです。
ですから、ピストルカートリッジやインターミディエイト弾(中間威力の弾薬)を発射するアサルトライフルは、カートリッジのスペックが違うので自動小銃とは違うジャンルとして扱われるのです。
ブローニングM1918
姉様が使用。装弾数20発。フルオートとセミオート射撃を選択でき、軽機関銃のようにも使え、一人で運搬できて歩兵分隊の移動に追従する分隊支援火器の始祖とも言える存在である。兵士の間で非常に人気の高い銃であった。 pic.twitter.com/TvN4YAzflC— ブラックラグーン武器紹介bot (@LAGOON2_BLACK) September 17, 2019
ちなみに高威力の小銃弾を発射するのですから、シンプルブローバックのような単純な機構では発射できないため、発射の際の火薬燃焼ガス圧を利用した「ガスオペレーションシステム」が前提になります。
また、冒頭にご紹介した「AUTOMATIC RIFLE」という用語は、軍事用語的には小銃弾をフルオートで撃てる「FN M249 MINIMI」や「M1918B.A.R」などの分隊支援火器を意味しており、通常の自動小銃には「SEMI-AUTOMATIC RIFLE」という呼び方をします。
各国の軍隊が自動小銃の実用化に消極的だった理由
頭がおかしいのでZB26を原型にしときながらストックを折り畳みにした九七式車載重機関銃をすごいと思ってる(すごくやってることは単純)
ZB26はストックのなかに復座バネと復座バネ軸が入ってるからそのままではストックは畳めないのだ pic.twitter.com/rQGHlPKvrV
— ウォルフガング・ゴッテンベルク【残余二万三千八百文字】 (@C11katao) December 10, 2019
モーゼルが近代ボルトアクションライフルを完成させた時より、各国の銃器設計家たちから小銃の自動化は常に試みられていました。
しかし、最初に実現したのはセミオートではなくフルオートオンリーのマシンガン(機関銃)だったのです。
一見、マシンガンのほうが、設計が難しそうに思えますが、セミ・フルの切り替えをせずに連射させるだけなら、マシンガンのほうがトリガーメカニズムがシンプルなのです。
四式自動小銃(日)
1944年に大日本帝国海軍が開発した半自動小銃。アメリカ製のM1ガーランドを日本海軍がコピーしたもので、弾薬や弾倉、照準器などに差異がある。戦後に行われた性能試験では良好な成績を残したとされる。 pic.twitter.com/V6lsPfki4f— 陸海空の兵器bot (@heiki_bot) September 24, 2019
もう一つの要因は、小銃をセミオート化すると、弾薬の消費量が桁違いに上がってしまい戦費の消費に拍車がかかることを各国の軍部が恐れたからです。
特に、小国で資源の乏しい日本などは、小銃の自動化の研究はしていたものの、弾薬消費量の増大に恐れをいだき、断念していました。
1944年6月7日ノルマンディ、M1 Garandを突き付ける米軍兵と降伏する独軍兵。
アメリカの制式主力小銃M1 Garandは大戦中に採用された主力小銃で唯一のSemi-automatic rifleである。弾薬消費が激しい半自動小銃は兵站輸送の負担を掛ける為に各国では全面配備が見送られた。 pic.twitter.com/UdT46taiH4— Firearms Bot in WWII (@FirearmsBotWW2) September 22, 2019
3つ目は加工技術の問題です。第二次大戦以前は日本のみならず、先進諸国でも小銃の最終仕上げは職人の手作業で行われていました。
よく、日本の8式歩兵銃や99式小銃は、最後の摺合せを職人が手作業で仕上げていたため、同じ小銃でも、パーツの互換性がなかったと、日本の加工技術の低さを指摘する声がありますが、
【M1ガーランド】
歩兵用の主力小銃として全面的に採用された初めての半自動小銃とされる。
およそ20年以上米軍の主力小銃だった
特徴はボルトアクションライフルに匹敵する高い薬室の閉鎖性と、自動銃としては比較的高い命中率。 pic.twitter.com/DVmSGcSq8Z— 銃火器大好き野郎 (@AK47_iine) September 22, 2019
実は、この傾向は日本だけでなく、当時では珍しいことではなかったのです。
セミオートライフルを問題なく作動させるためには、各パーツに高い工作精度を要求されます。
第二次大戦前の世界では、その要求に答えられた国はドイツとアメリカのみでした。
「M1ガーランド」、軍用銃に”規格”と”仕様”と”互換性”を持たせた半自動小銃
第一次と第二次大戦の戦間期にヨーロッパの各国と日本で小銃の自動化を模索しながらも、コスト、技術、弾薬の補給の面で断念せざるを得なかったことは、前のコーナーでご案内したとおりですが、そんなことにお構いなしに小銃の自動化に邁進した国がアメリカです。
設計者はジョン・ガーランド、使用される弾薬は今の7.62ミリNATO弾よりも強力だった「30-36スプリングフィールド」。
pic.twitter.com/kryxLh74nX
やっぱりM1ガーランドいい音してんな— 秀明 (@Hideaki_Non) June 9, 2019
この半自動銃は設計者の名を取り「M1ガーランド」の愛称で、第二次大戦と朝鮮戦争でアメリカ兵と共に戦った、歴史上で初めての実用的な軍用セミオートライフルだったのです。
このM1ガーランドの画期的だったことは、工業製品に初めて”規格”と”仕様”を取り入れて、パーツに互換性を持たせたことでしょう。
M1ガーランド 二次大戦で主力で運用された小銃でボルトアクションじゃないのはM1ガーランドだけ!当時でセミオートなアメリカは頭おかしい(褒め言葉)装填が打ち切らないとできないうえに特徴的な音が出てしまうことは些細な問題であるコキーン pic.twitter.com/Kw6Xe2urYx
— 偏見兵器bot(4日目:西"と"21a) (@heikihenken) April 10, 2019
M1ガーランドのテスト時に、軍のお偉いさんは、「どうせ手作業で摺合せたテスト用のライフルを持ってくるのでろう」と思っていたそうですが、設計者のガーランドは、その将軍の前で部品の入った箱から無造作に各パーツを選んで、目の前で組み上げたライフルを問題なく撃って見せたことに、驚いたそうです。
これはやはり、アメリカが合理性を追求しつつ大量生産、大量消費を実現させた国だから可能だったのでしょう。
ともあれ、各国軍隊がボルトアクションで戦う中で、唯一アメリカがセミオートライフルによる圧倒的な火力で連合軍を勝利に導いたのです。
アメリカのM14と7.62mmNATO弾の呪縛:バトルライフルの登場
画像出典:https://www.tokyo-marui.co.jp/products/electric/standard/38
アメリカ軍は第二次大戦でのM1ガーランドの成功体験を、戦後の世界秩序と安全保障の枠内に組み込もうと画策します。
第二次大戦の終了と共に、アメリカ軍はM1ガーランドのフルオート化に着手し、完成したのがM14ライフルです。
使用する弾薬は30-06スプリングフィールド弾より軽く短く、その割に初速は10%落ちるだけという効率の良い.308ウィンチェスターというカートリッジです。
これが後の「7.62×51ミリNATO弾」に制定されるのですが、この制定はほぼアメリカ軍のゴリ押しでした。
当時のNATO(北大西洋条約機構)加盟国はドイツで生まれたStg44と7.92×33ミリ弾というインターミディエイト弾(中間威力弾)の有効性を認め、イギリスを中心に現在の5.56×45ミリNATO弾に近い.280口径の弾薬採用を提唱していました。
アメリカに振り回されるNATO加盟国:.308Winの罪
ドイツが第二次大戦中にそれまでの常識を覆して、一発当たりの威力を落としても連射性能を優先するという考え方は、斬新ながらも的を射たものでした。
ドイツは戦時下に前線の兵士たちの意見を聞き取り、実戦で戦う距離はせいぜい300mほどであることを掴んでいました。
LF StG44
LFが第2次大陸戦争中に開発した世界で最初の実用的なアサルトライフル。現在ではあまり見かけることは無いが、ごく稀に紛争地域などで見ることが出来る。7.92×33mm(8mmSL)という弾薬を30発装填する。フルセミオート切り替え可能。 pic.twitter.com/d9e9c9lAVL— 銃器bot@企画「失世界」用 (@LWGunsBot) September 24, 2019
そのため、それまで使っていた7.92×57ミリモーゼル弾は無駄に威力が高いという事実に気づいていました。
その結果「有効射程が300mなら火薬を減らせるよね、なら薬莢を縮めていいんじゃない?そのほうが資源とコストを節約できて、弾薬の携行数も増えて、反動も軽減できてコントロールしやすいよね!」という結論に達したのです。
Haenel StG44を構える独軍兵。
Kar98k等の7.92x57mmMauser弾は1000mの有効射程を誇る小銃弾だが全自動射撃の際は反動制御が困難だった。StG44の7.92x33Kurz弾は有効射程300m程度の短小弾だが全自動射撃時の集弾性及び命中精度が良好であり、実用的なフルオートを実現した。 pic.twitter.com/QNhH5BAxlh— Firearms Bot in WWII (@FirearmsBotWW2) September 22, 2019
これが「インターミディエイト弾(中間威力弾)」という考え方です。
この新しい考え方を取り入れてセミ・フル切り替えのオートライフルの開発をベルギー、イギリス、スペインといった各国で進めていたのですが、それにアメリカが待ったをかけて.308ウィンチェスター弾のNATO採用をゴリ押ししたのです。
バトルライフルの誕生
アメリカはM1ガーランドの成功体験を捨てきれず、遠距離での殺傷力に拘り続けたため、NATO加盟国はアメリカの主張を嫌々ながらも取り入れざるを得ませんでした。
そのため自国の制式ライフルの口径を.308Winに変更をするはめになり、生まれたのが西ドイツのHK G3,ベルギーのFN FAL,そしてアメリカのM14ライフルです。
これらのライフルはセミ・フルのセレクティブファイアーでメカニズム的には現在のアサルトライフルと同じなのですが、使用する弾薬が小銃弾と変わらない.308Winであるため「バトル・ライフル」と呼ばれています。
Stg44が後世のアサルトライフルに与えた影響:AK47でソ連が捨て去ったもの
第二次大戦終了後、世界は東西に二分されます。いわゆる”東西冷戦”の幕開けなのですが、この時に自由主義陣営の軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)は、アメリカのゴリ押しで308WinをNATO軍の7.62×51ミリNATO弾として制式採用することになったのは、前述のとおりです。
【PUBGモバイル 武器紹介13】
SKS(マークスマンライフル)
SKSカービンは、1945年にソビエト連邦で制式採用された小型自動小銃(カービン)である。
AVS-36やPTRS1941などの設計で実績があったセルゲイ・シモノフが設計した。 #PUBG #武器 pic.twitter.com/yauZGfDaw3— GPES_bot (@gameproesports) March 25, 2019
それに対して共産主義陣営の盟主ソ連では、ドイツとの戦闘で、Stg44と7.92×33ミリ弾の優秀さを認めていたので、大戦終了後に進めていた自国の自動小銃開発に取り入れました。その結果、7.62×39ミリ弾を開発し、シモノフSKSカービンと共に制式採用します。
画像出典:https://www.tokyo-marui.co.jp/products/electric/nextgeneration/440
さらにSKSカービンと同時期に開発が進められていたセミ・フル切替式の試作銃にも7.62×39ミリ弾は採用されます。
この試作銃はStg44の影響を受けており、SKSシモノフカービンの後継機種として1949年に採用されたのです。これが皆さんがよくご存知の「AK47」です。
M14とAK47の明暗を分けたものとは?:ベトナムでの戦訓
アメリカのM14ライフルとソ連のAK47が初めて戦ったのは、公式にはベトナム戦争ということになっています。
この戦いで世界中のミリタリーライフルの方向性は決まったと言っていいでしょう。
結論を言えば、アメリカはNATOにゴリ押しして制式口径に採用した7.62×51ミリ弾とM14に戦争の半ばで見切りを付けて、戦時中にもかかわらずに自国の制式ライフルをM16と5.56×45ミリ弾に切り替えます。
その理由は、遠距離での射撃精度と殺傷力にこだわった7.62ミリNATO弾が、見通しが悪く接近戦が主体のジャングル戦では、まるっきり使い物にならなかったからです。
威力の強い7.62ミリNATO弾はリコイルが強いこともあり、また曲銃床を採用していたM14ではフルオート時には銃口が跳ね上がり、アンコントローラブルだったのです。
その点、ソ連のAK47は遠距離での命中精度と殺傷能力を捨てたのと引き換えに、フルオート時のコントロールのやりやすさと携行弾数の増加、弾幕による制圧力を手にしたのです。
この時のソ連の選択の正しさは、アメリカが戦争半ばでフルスペック弾から小口径高速軽量弾である5.56ミリに切り替えたことで証明されました。
イギリス陸軍を”激おこ”させたアメリカ:時代はバトルライフルからアサルトライフルに
NATO制式口径選定時にイギリスは5.56ミリに近い.280口径の採用を提唱していたのは前述のとおりです。
しかし、アメリカの7.62ミリ口径のゴリ押しで仕方なく屈したイギリスは、7.62ミリ口径のベルギー製FN FALを制式ライフルに選定します。
この時にイギリスは7.62ミリのフルオートは実用的ではないとの結論から、L1A1として採用したFALをセミオートオンリーのライフルにしたのです。
そうした苦渋の選択を迫った当のアメリカが、戦時中にもかかわらずサッサと5.56ミリに切り替えたことを聞いたイギリス陸軍は激怒します。
しかし、既にセミオートオンリーのL1A1を制式ライフルに選定したため、5.56ミリへの変更は次期制式ライフルであるSA80ファミリーの採用まで待つことになります。
L1A1が採用されてから実に17年あとのことです。
自動小銃とはなにか?ついてのまとめ
ステアーAUG
オーストリアのSM社が開発したブルパップ式アサルトライフル。プラスチックを多用し軽量化に成功している。pic.twitter.com/SQFQrenni4— Special Army Calege (@specialarmys) September 24, 2019
今回は自動小銃について第二次大戦中に誕生したアサルトライフルの元祖と言われるドイツのStg44からバトルライフル、AK47を経て、現在の主流口径である5.56ミリとM16に当たるまでの流れを簡単に追ってみました。
かなり端折ったたり重複してわかりにくかったりお見苦しい点も多々あるとは思いますが、どうがご了承ください。
サバゲー初心者の方がいきなり電動ガンのM4やAKを握っても、なぜこのようなデザインで、こうした機能なのかを理解するのは難しいと思います。
しかし、その銃の開発の軌跡を追えば、幾つかの疑問は払拭されると思います。
そう言った知識をお求めの方の手助けなれたなら嬉しく思います。